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2014年7月

2014年7月 6日 (日)

代替医療のトリック

久々にサイモン・シン、エツァート・エルンスト著『代替医療のトリック』を読み返していて思い出したことがあった。
 
この本の中にイヤーキャンドル(耳燭療法)という代替医療が載っている。内部が空洞になった筒状のロウソクを耳にぶっさして先端に火つける。すると耳の中には弱い吸引力が生じ煙突効果によって耳垢が筒に集まり取れるというもの。
 
これ、小学生か中学生くらいのときにやったことあったわ。買ってきたのかもらったのか親が持っていて試しにやってみたのだ。たしかテレビかなんかで紹介されて一時流行った記憶もある。効果のほどはどうだったかというと、包みを開くと耳垢がとれているし、火で耳が温められて気持ちよかった覚えがある。しかし、この本に書かれているようにイヤーキャンドルが有効だという科学的な根拠はない。耳からはいかなる物質も除去されないし、まあリラックス効果はあるかもしれないけど火傷とかの心配もあるよね、とのこと。俺が耳垢と思った筒の中のものは、ロウソクの燃えカスでしかなかったのだ。
 
 
へえ、イヤーキャンドルレベルでも代替医療に入るのかって初めて読んだとき思ったのは、医療と呼ぶほどのものでもないだろって認識だったからで、まあこのくらいはたいして金もかからんし、別にいいんじゃねえかなって思う気持ちもあるが。
 
けど、鍼が一部の症状を除いてはプラセボ以上の効果はほとんど無しってのはけっこう驚きだったなあ。だって鍼って日本じゃめちゃくちゃメジャーだし、色々効果謳ってるじゃん。ホメオパシーとかは軽くモノの本を読んだだけでもないだろうってのはわかるけど、鍼はあまりにポピュラーな治療だから、そうかこれも代替医療かってところに気づかされたんだわ。 
 
 
「代替医療のトリック」の鍼治療に関する記述の問題点
 
 
む、こんなの出てきた(PDF注意)。
 
1の項目で言及されている箇所は、本文ではここに該当する。
 
 
デモンストレーションとしてとりわけ華麗だったのは、大掛かりな外科手術で鍼が用いられた例だった。例えば、上海大学の付属病院を訪れたイザドア・ローゼンフェルドという医師は、二十八歳の女に、手術を行った外科医たちは、普通の麻酔ではなく、その女性の左の耳たぶに鍼を打った。ひとりの外科医が電気のこぎりで患者の胸骨を切開し、胸を広げて心臓を露にした。ローゼンフェルド医師は、その女性患者がしっかりと目を覚ましたまま、一部始終を見ている様子を次のように書いた。「その女性は一度たちともたじろがなかった。……女性の顔は何にも覆われず、腕に静脈注射の針も刺されていなかった。……忘れられないこのシーンを、私はカラー写真で撮影した。開かれた胸、微笑む患者、患者の心臓をつかむ外科医の手。
 
 
ちょうどここの部分メモってたのは、これによく似た映像を子どものころ見た記憶があり、この部分を読んで十年以上ぶりに思い出したからだった。世界まる見えのような海外のびっくり映像を紹介する番組だっと思うが、なんの道具も使わず麻酔もせず医者と思われる人間が素手のみで患者の腹をかっ捌いて患部を摘出するという治療だった。患者は痛がらないし血は一滴も出ないし傷もすぐに塞がってしまう。それが鍼による効果だったかは覚えていないが、「西洋医学では計り知れない治療法もこの世にはまだまだあるのだ!」みたいな紹介のされ方だったように思う。この歳になっても未だに覚えているほどあの映像は強烈だった。世の中にはそんな神の手を持つ人がいるんなら俺も病気になったらこの人に見てもらいたいとか子供心に思った。
 
引用部分の種明かしはこれに続く箇所に書かれているが、その部分を読んだ俺は、長いときを経て間接的に子ども時代に見たあの素手手術映像のトリックも知ることになる。
 
で、その引用部分のトリックなんだけど、手術前に胸の部分に大量の局部麻酔を浸潤法で投与されているからで患者が平気なのは鍼の効果でもなんでもないぜって話。そうか、俺が見たあの映像もそういう方法だったのかーと。いや、もしかしたらそんなことすらしてなかったかもしれないただのダミーボディ、ホラー映画で使われているような鶏肉とかそういう方法だったかもしれないが。
 
 
鍼治療が効果あるのかないのかはさておき、とりあえずの基礎知識、科学リテラシー?を養う上でこれくらい問題点も孕んでいる、あるいは疑わしいことが代替医療の中にはあるって認識を持つために、中学あるいは高校の夏休みの読書感想文の課題図書としてこういう本も入れてもいいんじゃないかと思うんだけど。それともこういうのをチョイスする学校もあったりするのだろうか。俺の学校は大抵小説だったように思うけど、時代的にも学校によっては今ならこういうのが入っていても不思議ではない。 
 
 
いや、イヤーキャンドルくらいならどうでもいいけどさ、代替医療の問題点を知らずにそれに飛びつき、しかもそれが信じ込みやすく冷静な判断が出来ない状態にある場合、それってつまり通常医療では手の施しようがないとか治療が難しい病気になってしまったときとかだけど、そういうときに怪しげな治療に手を染める歯止めになると思うんだよね、ある程度こういう本で知っていれば。通常医療を完全に止めてしまって効果も薄く費用もかかる治療へと舵を切ってしまうことこそが怖いこと、というのは代替医療の問題点としてこの本でも言われているけれど。
 
 

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